モーニング娘。6期メンバー亀井絵里さんを中心にハロプロを応援するブログです。ネタがない時は管理人の日記になってしまう可能性もありますが、マイペースに、かつ真剣に、亀の歩みのごとく更新して参ります。
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大地が揺れたあの日。
あまりにも多くのいのちが失われたあの日。

不安に苛まれながら、僕は職場で携帯電話を握り締めていた。
テレビは繰り返し、ふるさとの大地を嘗め尽くす津波の映像を放送している。
家族は無事だろうか。友人たちは難を逃れただろうか。
いつまで経っても電話は輻輳で通じず、焦りだけが募る。

震災は首都圏にも深刻な影響を及ぼしていた。
JR、地下鉄、私鉄は全線で運転を見合わせているという。
全社的に帰宅命令が出されたが、僕の部署はこうなってからが忙しい。
しばらく、半ば職場に泊まり込む目まぐるしい日々が続いた。

幸い、家族や友人たちの無事は確認することができた。
会社の東北事業所にも大きな被害はなく、条件が整えばすぐにも復旧できそうだ。
しかし、ふるさとに残る爪跡を思えば、手放しで喜ぶ気には到底なれない。
募金と節電くらいしかできない自分に無力さを感じてもいた。

気がつけば4月の声を聞いている。
芽吹きはじめた木々と、寒さの緩んだ空気が春の訪れを感じさせた。
例年ならば心が軽くなる季節だが、今年は何をしても浮かない気分が続いている。
そんなある日のことだった。

110402

京王線の笹塚駅前。
高架に身を寄せるように雑多な建物がひしめき合っている。
その一角を占める古びたビルの地下2階に、目指す笹塚ファクトリーはあった。
この劇場で上演される舞台「TIME CAPSULE」がこの日、初日を迎える。
主演は元モーニング娘。小川麻琴さん。
僕がハロプロに縁のある現場を踏むのは、昨年の12月15日以来だった。

この公演は震災前にチケットを取っていた。
正直、一時は観劇を自粛するべきかどうか迷ったものだ。
しかし、久しぶりに休みが取れたこともあり、とにかく心が息抜きを欲している。
少しの娯楽くらいは許されるだろうと思い、現地に足を運んだ。

受け付けで名前を告げてチケットを受け取ると、会場の中へ。
会場はさほど広くはないが、傾斜がついていて舞台を見やすそうだ。
ステージにはギターとハーモニカを奏でる男性が1人。
本来はアンプでBGMを流すところを、節電でアコースティックにしているようだ。
落ち着いた演奏に心が和まされる。

僕は自分の席に座り、開演を待った。
出演する俳優のファンなのか、客席には女性の姿が目立つ。
そして、見覚えのあるハロヲタの姿もちらほら見えた。
アイドリング!のフォンチーさんの写真を食い入るように見ている男性もいる。

前説が終わると、いよいよ舞台が始まった。

物語の舞台は海沿いにある高校。
今は廃校となったその場所を、卒業生の女性が訪れる。

思い出を確かめるように、かつては多くの若者で賑わっていた校内に佇む女性。
ふと、教室の中に打ち捨てられた一冊のノートを見つける。
それは、彼女がかつて所属していたダンス部の稽古日誌だった。

書き手は5年先輩の明日香という女性。
日誌には、当時ダンス部に起きた事件のことが記されていた。
女性は時を忘れてそれを読みふける。

時間の針は、日記が書かれていた頃に戻る。
賑やかなナンバーに乗り、ヒップホップダンスの練習をする高校生たち。
いかにも楽しそうではあるが、未熟さが目立つ。
技量にばらつきがあり、一体感(アンサンブル)に乏しいのだ。

練習を見ていたコーチは、部長の明日香(マコ)らに厳しいダメ出しをする。
コーチは何より、練習を4日も休んでいる部員がいることに苛立っていた。

欠席している部員は在日韓国人。
同じ在日の部員たちに聞いても、詳しい事情は誰も知らない。

そこへ顧問の教師が現れ、件の部員が他校の生徒と暴力沙汰を起こしたことを告げる。
彼は退学処分となり、ダンス部も存続の危機に立たされているという。

明日香は本人を訪ねて事情を聞く決心をする。
その部員は、自ら暴力を振るうような人間ではない。
絶対に何か事情があるはずだと信じながら。

この舞台は、今後韓国公演を控えている。
物語の詳しい筋をこれ以上書くことは避けたい。
ただ、いくつか感じたことを記してみようと思う。

物語のテーマのひとつが、在日韓国人と日本人の関係だ。
同じ国で、同じように育ってきたのに、なぜ両者の間に壁があるのか。
劇中、自分は在日を差別などしていないと明日香が力説するシーンがある。
それに対し、在日の後輩部員は「でも、区別はしてますよね」と切り返す。
明日香はそこで、多数派には見えない世界があると知り、途方に暮れるのだった。
根が深いテーマを正面から扱ったことに作り手の意気込みを感じた。

演技面では、座長であるマコの成長ぶりが嬉しい。
劇中には何度か彼女のモノローグが入る。
一人芝居は難しいはずだが、堂々とこなしていた。
いかにもマコらしい、明るく愛嬌たっぷりの語り口。
だが、その内容はひたすら重い。
明朗な彼女のキャラクターとの対比が、悲しみを一段と際立たせていた。

そして、ダンスシーンは非常に見ごたえがある。
プロのダンサーも参加しているだけに、レベルは高い。
娘。随一の踊り手として鳴らしたマコも存分にその実力を発揮している。
冒頭のダンスシーンで、彼女は一瞬だけリズムを外す。
あまりにナチュラルなので、本当のケアレスミスなのかと思ってしまった。
しかし、これが後々、重要な伏線として生きてくる。
ちゃんと踊ることができない人は、狙って間違えることもできないはずだ。

およそ100分間にわたる舞台が終わると、出演者によるあいさつへ。
ステージ中央に立ったマコが一堂を代表してスピーチをした。
限られた日程の中で、自分たちにできる最高の舞台を見せたいとの内容。
まさに座長といった佇まいには頼りがいさえ感じた。

公演終了後は、キャスト全員がロビーでお見送りをしてくれた。
女性陣の前には今回の震災の募金箱。
マコとアイドリング!のフォンチーさんのところが人気があるようだった。
僕もマコの募金箱にお金を入れ、「また舞台があったら来るね」と声をかけた。
にっこりと笑い返してくれた顔を目に焼きつけ、僕は階段を上がった。

いろいろと悩みはしたものの、今はこの舞台に来て良かったと感じている。
被災地のことを思えば、華美な催しは自粛すべきだとの論調には一理あると思う。
しかし、今一番大事なのは、被災しなかった者が冷静に日常を生きることではないだろうか。
被災地にいない我々がいつも通りに仕事をし、生活をすることで、この国の経済を回す。
それがゆくゆくは被災地にも波及し、復興の一助になっていくはずだ。
もちろん、これ見よがしの浪費をする必要はない。
募金や節電など、自分ができることをやるのも忘れずに。

その上で、ふるさとが被災した僕にはやるべきことがある。
近いうちに交通手段を確保して実家に帰り、家族を元気づけなければ。
親は電話では「来なくていい」と言っているが、額面通りに受け取るわけにはいかない。
酒でも携え、地元のために働く友人たちを激励に行くのもいい考えだ。

いろいろ考えているうちに、心がすっきりとしてきた。
暖かい夜なので、新宿まで歩くことにした。

そういえば、最近は新宿でいもりんが出演する舞台が上演されたようだ。
千秋楽には、えりりんも家族と観劇に訪れたらしい。
ネット上のレポを見ると、えりりんはファンたちに囲まれて握手攻めにあったという。
芸能活動を休止し、今は一般人だというのに、ちゃんと対応するのが彼女らしい。
えりりんは、卒業しても僕が知っているえりりんのままのようだ。
何はともあれ、震災後も彼女が元気でいるのは嬉しい。

次にいもりんの舞台がある時は、自分も見に行くことにしよう。
かつてのようにハードなヲタ活動はもうできないが、自分のペースで現場を楽しもう。

行く手には、やや灯りを落とした都心のビル群が、春の夜にぽっかり浮かびあがっていた。
早く、誰もが安心して暮らせる世の中が戻ってきますように。
そんなことを思いながら、僕は新宿駅へと向かって歩みを進めた。
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